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道 具

今日は10月9日・・・ってことで、

 道具の日

なのだそうな。

大抵の方は普段のお仕事や趣味の世界で何某かの道具をお使いだと思いますが、その道具に関して将棋界の巨人・大山康晴十五世名人がこのように仰っています。


            

           ◆     ◆     ◆     ◆

将棋が強くなるには、どうすればいいか? と聞かれる。

妙薬はない。 技術を修得することは第一だし、心を鍛えることも勝つための秘訣である。

いろいろなことがいわれるが、意外と見落としている大事なことがある。

以前、某工業メーカーの社長さんと対談した時、工場では工具類を大切に扱うと聞いた。

工具は製品を造り出す基本のものだから、大切にするのは当たり前であるが、工具をいつもピカピカに磨いておく心構えがないと、良い製品が生まれないということであった。

私たちも内弟子修業の頃は、道場のお客が帰ってから駒を磨き上げるのが毎日の務めであった。

駒を一枚一枚、乾いた布で磨いて汚れを取る。
一組が40枚で、それが10組もあるのだから、駒を磨くといっても大変な仕事である。

毎日せっせと駒を磨いた。

初めのうちは、ただ汚れを取り除くための作業だと思っていたが、それが将棋の修業に結び付くことが分かってきた。

駒を磨き盤を拭く仕事の中に、プロ棋士となる心構えが培われていくことが実感として分かるようになってきた。

道具は、その職業の人にとって何かを生み出す手段ではあるが、同時にそれはその人の分身である。

それが納得できた時、その人はプロとして歩みを始める。

プロとしての自覚が芽生えてくる。

そうした体験から、私は将棋を勉強しようという人には、まず良い道具を持ちなさいと勧めるようにしている。

いい道具を持てば、大事にするのが人情である。

対局が終わって、無造作に駒袋に仕舞うようなことはしない。
歩が1枚でもなくなっては大変なので、数を勘定して仕舞うようになる。

手垢で汚れていると気づけば、誰に言われなくても駒を磨くようになることだろう。

その気持ちが大切だと思う。 駒や盤を大切にすることで、いま指し終った将棋の印象が、いつもより多くの残ることであろう。

その一つ一つの積み重ねが、将棋に対する知識を深めていくし、そこから視野も開けてくる。

     

以前、我が家の板塀や潜戸を取り替えるために大工さんが来られた。

私は働く姿を見るのは好きなので、仕事の邪魔にならないように見学していた。

若いその大工さんは、我が家に来てすぐに道具を研いでいた。
時間をかけて、丁寧に研いでいる。

それが終わって仕事にかかったが、手順よく作業を進めていくのが手に取るように分かった。

3時の休憩時間に、棟梁が来られて 「うん、よくやっている」 と満足げであった。

その棟梁は私の方を見て、「若いですけど、腕がいいんですょ」 と言ってから、この男は道具を選びますからね、と付け加えた。

なるほどと合点がいった。 将棋でも同じことだと思った。
茶道や華道、書道でも同じことなのであろう。

私たちがタイトル戦などで使う盤は100万円くらいで、駒は20万円はする品物である。

名盤で、名品の駒を使うので、名勝負が生まれ名局が生まれる。

江戸時代の縁台将棋では、足りない駒の代わりに貝殻を使ったり紙で代用することが多かったという。
それでも将棋は指せるが、決して楽しくはなかっただろう。
間に合わせの道具で指していては、上達するはずがない。

アマチュアの方は、決して無理をして特別に高価な盤や駒を求める必要はないが、できれば経済の許す範囲で、できるだけ高級品に近いものを手に入れ、大事に使うようにしていただきたい。

道具を愛する心が生まれれば、いつの間にか腕前は上達する。

請け合ってもいいと思う。


            ※大山康晴・著 『勝負のこころ』 より 抜粋・編集にて


           ◆     ◆     ◆     ◆

良い道具を大切に使うのが、一流の職人。

イチロー選手は、自分のバットを除湿剤入りのスチール製の特製ケースに入れて保管し、ぐグラブ共々絶対他人に手を触れさせないといいます。

まさに武士の刀のような、魂の宿った分身の如き丁重な扱い方。

それとは逆に、以前私は人気テレビ番組 『料理の鉄人』 のアメリカ版 『アイアン・シェフ』 で日米の料理人対決を観た際、調理を終えたアメリカ人シェフが、何と靴を履いたまま俎板の上に飛び乗ってガッツポーズをした場面を観て絶句したことがあります。

もしそのシーンを大山名人が見たら、激怒するでしょうネ。

国民性の違いと言ってしまえばそれまでですが、少なくとも私たち日本人は道具を大切にする心を持ち続けたいものです。扇子



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