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報 恩

今日は、私の愛読誌・月刊『致知』9月号に掲載された〝博多の歴女〟白駒妃登美さんのエッセイより、明治時代の偉人の生き様を抜粋・編集にてご紹介致します。

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幕末から明治時代にかけての日本には、選択肢は2つしかありませんでした。

ひとつは西洋諸国の力の前に屈すること。 

そしてもうひとつは自分たちで科学技術を身につけて独立を守ることです。

先人達が選んだのは後者、つまり独立を守る道でした。

そのために多くの留学生たちが世界に旅立っていきましたが、北里柴三郎もそのひとりでした。

          

33歳の柴三郎か内務省衛生局からドイツのベルリン大学に留学したのは1885(明治18)年のこと。

近代細菌学の開祖と謳われたコッホに師事した柴三郎は、最初の1年余りは下宿先と研究室を結ぶ道しか知らなかったといわれるほど研究に没頭。

世界中の細菌学の権威たちが果たせなかった破傷風菌の純粋培養に、僅か4年で成功したのです。

更に翌年には破傷風菌に対する免疫抗体を発見して血清療法を確立。

これによって、彼は第1回ノーベル生理学・医学賞の候補にノミネートされました。

その柴三郎には欧米各国の大学や製薬会社からヘッドハンティングの話が次々と持ちかけられますが、彼はどんな破格の条件にも目をくれることなく日本に帰国する道を選びました。

日本の医学の発展のために一身を賭して学ぼうとした志を貫徹した柴三郎ですが、その根底には留学期間延長を持ち掛けてくださった明治天皇へのご恩返し、という思いもあったと言われています。

しかし帰国した彼は母校・東大医学部との軋轢もあってか内務省衛生局に復職すら出来ず失職の憂き目に。

その窮状を救ったのが、福沢諭吉でした。

           

諭吉は柴三郎の高潔な人柄や崇高な志に胸を打たれ、芝公園内の所有地に私財を投じて伝染病研究所を建設。

評判を聞いて患者や見学者が増え手狭になると、柴三郎自身が愛宕町に新しい研究所を立てようとしたところ、〝伝染病〟という名称に過剰反応した近隣住民から建設反対運動を起こされましたが、この時も諭吉が建設予定地の隣に家を新築し息子夫婦を住まわせたことで沈静化。

芝三郎の諭吉への恩は、終生忘れがたいものになりました。


諭吉が亡くなった時、芝三郎は葬儀の場で 「報恩を期す」 と宣言し、かつて諭吉が一度は創設したものの資金難により10年足らずで閉鎖を余儀なくされた慶應義塾医学所を復興すべく慶應義塾大学の医学部創設に尽力。

手塩にかけて育てた弟子たちを惜しげもなく教授として同大医学部に送り込みました。

現在に至るまで慶大医学部が東大医学部と並ぶ存在感を示しているのは、諭吉への恩に報いようとした柴三郎の力によるところが大と言えましょう。

その諭吉が深い恩を胸に刻みこんだ人物がいます。

それは、軍艦奉行として咸臨丸の司令官を務めた木村摂津守喜毅

           


彼は中津藩の下級武士だった諭吉を、いわゆる私設秘書として採用すると、遣米使節団を乗せた咸臨丸に乗船させ、これが諭吉の人生を開く大きなきっかけになりました。

その木村摂津守には維新後明治政府から出仕の要請が度々あったものの、彼は 「士たる者は二君に仕えず」 の教えを貫き、その要請を固辞。

結果的に、30代にして職を失い家族を養うことすら困難な状況に陥ってしまいます。

その窮状を救おうと生活費を送り始めたのが、諭吉でした。

後に海軍に入った摂津守の息子にも 「君にもしものことがあっても、私の命ある限り、ご両親の暮らしは支えるから安心しなさい」 と手紙を送り、更に海軍で出世した息子の 「もう自分には十分な収入があるのでお金は結構です」 との申してけに対して、

「あのお金は君に送っているのではない。
 君のご両親に送っているのだ。」

と言って、諭吉は生涯お金を送り続けました。

日本とは、何と愛に溢れた素晴らしい国なのでしょう。
日本人が古来最も大切にしてきたもの、それが恩です。

日本人のことを〝感謝の民族〟と言う方もいますが、感謝が気持ちだけに留まることが多いのに対し、恩を感じたらその恩を返そうとか、誰かに送ろうとするなど必ず行動になって現れます。

ですから、恩を感じるセンサーを育むことが、日本人の遺伝子をスイッチオンにする一番の原動力になるのではないかと、私は思うのです。


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皆さんは、受けた恩を本人や次世代に返していますか?

私は・・・。あせあせ





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