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徳 将

昨年8月に公開され、昭和天皇を本木雅弘さんが演じたことで話題となったリメイク邦画大作 『日本のいちばん長い日』 ・・・鑑賞された方もいらっしゃると思います。

今日は、1945年8月14日の終戦のご聖断が下った御前会議から15日の玉音放送までの1日の動きを描いた同作において、役所広司さんが演じた中心人物の一人、

   あ なん これちか

 阿南 惟幾 陸軍大臣

にスポットをあててみたいと思います。


         

阿南氏は、1887(明治20)年に現在の東京都新宿区で生まれました。

(ただし父親が内務官吏で転勤を繰り返していたため、本籍は父の郷里・大分県竹田市)


早くから軍人を志していた彼は、徳島中学校2年の時に当時第11師団長だった乃木希典陸軍中将の助言もあり陸軍幼年学校を受験し、見事合格。

以後陸軍士官学校-陸軍大学校と陸軍軍人の本道を歩みます。

しかし大学校の受験には3度失敗し、卒業時の成績も60人中18番目と、決して目立つ存在ではなかったとか。

陸大在学中に竹下平作中将の次女・綾子さんと結婚し5男2女を設けた阿南氏は、1929(昭和4)年から4年間、侍従武官を拝命。


その後47歳で〝陸軍三大閑職〟のひとつとされる幼年学校々長に就任しますが、阿南氏自身はこれを日本の将来を託す若者を育成する大切な役目として前向きに2年間務めたといいます。

そして在任中に二・二六事件が勃発した際は、生徒に対する訓話で

「政治の改革を叫ばんとする者はまず軍服を脱ぎ、しかる後に行え」


と厳しく叛乱将校を批判。

そんな政治と関わらない姿勢や派閥に加わらなかったこと、また職務に対する精勤ぶりや優れた人格を評価する声が陸軍内で次第に高まり、あの石原莞爾からも一目置かれる存在に。

そして1939~41年まで陸軍次官を務め1943年に陸軍大将に昇格すると、1945年4月に誕生した鈴木内閣において、陸相を拝命。

鈴木貫太郎総理は侍従武官時代の上司・侍従長であり、阿南氏が終生尊敬していた人物でした。


そして同年8月14日、終戦が決まった後に陸軍の剣道場で、後に〝昭和の剣聖〟といわれた剣士・斎村五郎氏と稽古をした後、翌日早朝のポツダム宣言受諾打電直前に58歳で割腹自殺を遂げました。

自決の直前、かつて侍従武官時代に拝領した、昭和天皇自らが袖を通されたことのある純白のワイシャツに着替え、介錯を断り切腹から1時間以上もかけての絶命だったといいます。 

現役大臣の自殺は、我が国で内閣制を敷いて以降初めてのことでした。

阿南陸相の真意・自殺に関しては、様々な推測・・・すなわち

 ① 徹底抗戦説
 ② そう見せかけながら終戦を目指した腹芸説
 ③ 本土決戦で敵を叩いてから講和に持ち込む一撃説

 ④ 決断を下させなった気迷い説


がありますが・・・私は②の腹芸説を取ります。

徹底抗戦を表向き演じた故に、終戦の聖断が下された10日以降、徹底抗戦を主張する一部陸軍将校の動きは、14日夜に起きた 『宮城事件』 だけで済んだ、と。

また阿南陸相の自殺は昭和天皇の苦渋の決断を尊重し、敗戦の責任を一身に背負うと同時に、自らの命と引き換えに国体を維持するべく陸軍の叛乱・抵抗を防ぐことが目的だった、と推測しています。

その思いが、彼の遺書に認められた

〝一死以テ大罪ヲ謝シ奉ル〟

という一文に表わされていると思うから。 

かつて二・二六事件時に幼年学校の学生に対して

「彼ら(叛乱将校)にも、ただひとつ救われる道がある。
 己の非を悟り、切腹して陛下にお詫びすることである。」

と訓話したことを、自ら実践したわけです。

阿南陸相の人となりや教育者としての側面については、冒頭ご照会した映画をご覧いただくか、あるいはこちらの書籍をお読みいただいてご判断いただければ・・・。

 『一死、大罪を謝す 陸軍大臣阿南惟幾』
                  (角田房子・著 ちくま文庫・刊)

      

これを読むと、第一回目の聖断が下った10日から玉音放送に至るまでの昭和天皇のご心情や内閣・軍部の混乱ぶり・駆け引きがよく分かります。

また、もし陸相が阿南氏でなかりせば、日本はどうなっていたか?・・・想像すらつきません。

陸軍内では、〝智将でも政将でもないが、徳将である〟と言われた、一命を賭して日本の行く末を案じた武人のご冥福を、あらためてお祈りする次第です。

果たして、今の永田町に彼の如く真に日本のために命を懸ける政治家はいるや、否や?うー


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