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修 業

以前ある元IT関連会社々長が、「寿司職人が何年も修業するのはバカ」 と発言し、ネット上で物議をかもしたことがありました。

また「機械が握った寿司と、熟練職人の握った寿司の違いって何?」 とか、「マニュアルさえあれば、何年も下積みする必要などないのでは?」 などという意見も、時々散見されます。

人それぞれ意見はあるでしょうが・・・その修業に関して、あの〝料理の鉄人〟道場六三郎氏が月刊『致知』7月号で語っておられましたので、以下に抜粋・編集にてご紹介致します。

        



          ◆     ◆     ◆     ◆


料理の道一筋に歩み続けて66年。 今つくづく思うのは、

「何歳になっても、人間を磨いていくことが重要である」

ということです。

どんな職業にも上には上がいるもので、自分だけの小さな世界で留まっていては、成長しません。

常に謙虚さを持ち、上を目指していく。 決してもうこれでいいと思わない。

85歳を迎えてもなお、そういう気持ちで調理場に立っています。
これは若い時からの習慣が身についているのでしょぅ。


私は20代の頃、いろいろな店で修業を積んできましたが、「いま一番早くて綺麗に包丁を捌けるのは誰ですか?」 と調理師会の親方さんに聞いては、その料理人のいる店まで足を運び、「ああ、こういうふうにやるのか」と細かく観察し、ノートにメモして研究を重ねていました。

自ら盗むようにして学んで吸収しているのか、あるいは人から言われて嫌々やっているのか・・・どちらが伸びていくのかは、言うまでもありません。

20代の方には、是非この心構えを身につけていただきたいと思います。

17歳の時から魚屋で働き始めた私は、「六ちゃん、早く手に職をつけた方がいいよ」と仕入れ先のチーフに言われた私は、地元調・石川の調理師会々長さんに紹介状を書いてもらい、東京・銀座の 『くろかべ』 という日本料理店で働くことになりました。

母親としては、周りから嫌われたり、いじめに遭ったりすることが一番心配だったのでしょう、

家を出る私に

「六ちゃん、人に可愛がってもらえるようにせないかん」

と言葉をかけてくれました。 


実際、『くろかべ』に籍を置いていた1年余りの間、店の親父さんや先輩、お客様から随分可愛がられましたが、それはひとえに両親の教育のおかげです。

両親は浄土真宗の信仰に篤く、事あるごとに礼儀・作法、人としての生き方を説いてくれたからです。


「親や先生のいる前では真面目にやって、見ていないと手を抜く人がいるけど、とにかく神仏は全部見てござる。 だから陰日向があってはいけない。 どんな時も一所懸命やらなきゃいけないよ。」

そんな言葉に従って、朝一番に店に来て先輩の白衣と靴を用意しおいたり、ボロボロになった高下駄を修理したり、あるいは親父さんから「ガス台が汚いから綺麗にしろ」と言われれば、翌朝4時まで徹底的に磨いてピカピカにしたり・・・。

どうやったら親父さんや先輩が喜んでくれるかを常に考え、身を粉にして仕事に打ち込みました。

そうやっていると、思いがけず先輩が料理のレシピノートを見せてくれるようになり、新しい仕事を回してくれるようになり、どんどん料理の腕を磨くことができたのです。


         

                  24歳の道場氏

もうひとつ、修業時代からいつも心に留めていたことがあります。

「人の2倍働く、人が3年かかって覚える仕事を1年で身につける。」


とにかく早く人の上に立ちたい、下積みの期間をできる限り短くして一人前の仕事がしたい、という思いを強く抱いていました。

そのためには、まず店の料理人の中で一番にならなければなりません。 

どうやったら早く、綺麗に手を動かせるか、生産性を高めていけるか、絶えず工夫を凝らしたものです。

例えば、ネギやキュウリを切る時、人が3本置いて切っていたら、私はその上にもう1本重ねて4本で切ってみる。

それができるようになったら、5本で挑戦してみる。

当然、最初はなかなかうまく切れませんが、脇の締め具合や手首の使い方など、試行錯誤を重ねていくことで、自分だけの得意技を編み出していきました。

当たり前のようでずか、仕事にも人生にも締め切りがあります。

ですから、常に先を見通して時間を無駄にせず、一つ一つの仕事をテキパキと仕上げていくことが大事だと思います。

些細なことを疎かにする人は伸びていかない・・・これはどんな仕事にも当てはまるのではないでしょうか。

これまで私は数多くの料理人と接してきましたが、中には伸びていく人もいれば途中で止まってしまう人、消えていないくなってしまう人もいます。

その差はどこにあるのか。

私は料理の腕以上に日常のあり方に表れると思っています。

玄関で脱いだ靴を揃えるとか身の回りの掃除をきちんとするとか、あるいはお客様にお膳を出すときにお皿や箸が傾いていないかなど、日常に当たり前のことが徹底できているか否か。

更に言えば、伸びる人は若いときの数年間に〝バカ〟がつくほど仕事漬けの日々を送っています。

これは間違いありません。

どこまでも上を目指し、謙虚に素直に人の言うことを聞く。 そして、どんなに辛いことがあっても、ここが踏ん張りどころと思い、逆境をも喜んで受け入れ、苦しいことから逃げない。 決して諦めない。

そこが一流と二流を分けるのです。

         ◆     ◆     ◆     ◆


実は道場氏自身、20歳代にホテルの板長から酷いいじめを受けたことがあったそうな。

それでも 「石の上にも3年、いったん出て行ったら、石にかじりついてでも我慢しろ」 という父親の言葉を心の支えにして耐え抜いたことで、その板長から信頼を得た経験があるとか。

また同誌に掲載されていた遺伝子工学の権威・村上和雄・筑波大学名誉教授と池上本門寺や国技館などの設計を手掛けた建築家・今里隆氏の対談に、こんな話が・・・。

「ノーベル賞を取られた利根川進氏が所属していたアメリカの研究室からは、ノーベル賞受賞者が5人も出ている。

その5人が集まって、先生のどこが良かったのかを話し合ったけど、結論が出ない。

結局、何も教えてくれなかったことが良かったのではないか・・・。」

この話は、道場氏の話と共通点があると思うんです。

教えてもらった技術や知識は身につかないし、教えてもらっているだけでは伸びない。

自分で盗んだり考えたり苦しんだ末に身につけた技術や知識は忘れないし、伸びる・・・という意味において。


もし入社してすぐ嫌な思いをしたりやる気を失くしたら、辞める前にこの道場氏の教えを噛みしめてください。笑3






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