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親 戚 <下>

重苦しい空気の中、書類を片付け始めて十数秒たったところでしょうか・・・それまで暫く黙っていた一番上のご義兄様がおもむろにお義姉様に向かって口を開きました。


「おいオマエ、いい加減にしろょ。

今から別の葬儀社なんて、オマエに探せるのか? 


それに見積金額だって十分安いし・・・。

だいたいオマエが葬儀代払うわけじゃないだろう。」


「そりゃ、私が払うわけじゃないわョ。 だけど、○▲×■・・・」


と、ここでご次男様が参戦。


「だからな、オマエのそういう◆▽※◎・・・」


「そんなことないわョ! 兄さんだって※●◆△・・・」


(以後数分間にわたり、壮絶(?)な兄姉4人の場外乱闘が繰り広げられましたが、あまりに過激な内容のため、ここで再現することは控えさせていただきます。 どうかご了承下さい。)




             * * * (中 略) * * *


「分かったわョ。 もう兄さん達の好きにすればいいワ!」怒


お義兄様達から思わぬ反旗を翻されたお義姉様は、プイッと横を向いてフクれっ面。


一番上のお義兄様は私の方に向き直り、


「すまんネ、みっともないところをお見せしちゃって。

話は分かりましたから、見積り通りでお願いしますワ。

妹にはワシから後でよく言っときますから。」

とおっしゃって下さいました。 私はそのお言葉を受けて、


「わかりました。 ありがとうございます。

それでは先程ご説明した段取りで、精一杯お手伝いさせていただきます。」


と申し上げ、一旦片付けた書類を再び取り出して奥様に手渡し、その場を失礼しました。


玄関を出ると、奥様が 「ちょっと待って!」 と追いかけてこられたのです。


「本当にありがとうございました。 おかげ様で何とか主人の思い通りの葬儀になりそうです。 よろしくお願いしますね!」


そして、急に小声で


「正直、一時はどうなることかと心配しましたけど・・・さっきお義姉さんに 『他の葬儀社見つければ?』 って言ってくださった時は、ちょっとスッキリしましたワ。」


そう話しかける奥様のお顔は、血の気が戻ったように紅潮していました。


       


翌日の通夜、そして次の日の告別式と、無宗教式での葬儀は滞りなく終了しました。


参列されたご親族約25名の方々からは、それまでの経緯を知ってか知らずか、


「おぉっ、凄いなぁ。 自宅にこんな綺麗なお花の祭壇を飾ってくれるなんて。」


というお褒めのお言葉を口々にいただき、2日前のやり取りなんかはどこへやら、お義兄様達も満足そうでした。


ただ例のお義姉様は2日間、私と一度も会話することなく目も合わせてくれませんでしたが。


(他のスタッフからの報告によると、彼女は私の見ていないところで喪主を務めた奥様に何度も 「ウチの方じゃこうするの!」 とあれこれ口出ししてたみたいです。)うー


告別式の後、ご主人は火葬場で荼毘に付され、(普通の)白瀬戸のお骨壷に収められてご自宅に帰ってこられました。


そして翌日、ご親族が全員帰られたことを電話で確認した私は、ある物を持って再び奥様の元を訪ねました。


「昨日まで本当にお疲れ様でした。 いろいろ大変でしたね。

ところで今日は、これをお届けに伺いました。 


これならきっとご主人がお喜びになると思ったものですから。」


と申し上げて私は奥様に、お見せしたのが、コレ。(


             


そう、キリスト教葬用の『骨覆い』。


奥様はこれを目にするや否や私からひったくるように手に取ると、祭壇に安置されたご主人の白い骨覆いを外し被せました。


暫しお骨壷を抱きしめて遺影写真の前に座り込み、

「あぁっ、アナタ!」

と絶句したまま、奥様の丸まった背中は小刻みに震え続けていたのです。




                          ・・・・・Amen

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