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豪放細心

人間には、さして実力もないのにスルスルと出世したり財を成す運の良い人もいれば、実力はあるのになぜか不遇の人生を歩む人もいます。

今日は、(失礼ながら)その後者のタイプだったといえる

      
ともゆき

 山下 泰文 陸軍大将

の命日・没後70周年にあたります。

山下大将は1885(明治18)年に高知県で生まれました。

地元の海南中学校から陸軍中央幼年学校、陸軍士官学校、陸軍大学校と進み、卒業後はスイス・ドイツに留学。

帰国後は陸軍省軍事課長・軍事調査部長と順調に昇進。

しかし、1936(昭和11)年に二・二六事件が起きた際、〝武士の情け〟から旧知の青年将校の自決に勅使御差遣を申し出たことが反乱軍に肩入れしたと天皇陛下の不興を買い、一時は軍を辞する覚悟を固めます。

しかし陸軍大臣の慰留によって思い止まり、歩兵第40旅団長として朝鮮に転任・・・つまりは、左遷を甘んじて受けることに。

この一件で、彼は陸軍の主流派から外され、以後参謀本部などのエリートコースに戻ることはありませんでした。

1939(昭和14)年に大阪第4師団長となり、その後一時航空総監として大本営に戻ったのですが、陸軍内で人気が高かったことで前任の東條英機に妬まれ、半年も経たない内に体よくドイツ視察団々長として大本営から出されてしまいます。

この訪独の際、面会したヒトラーから 「日本は即刻英米に宣戦布告すべし」 と迫られた際、「日本はすみやかに支那事変を終結しソ連の侵略に対する準備をせねばならない。 英米に対して戦争を敢行し得る状態ではない」 と突っぱねたとか。


視察から帰った彼は、自国の軍備が時代遅れであることを痛感し、その整備を具申。 


そしてヒトラーに断言した如く、英米との交戦を回避するよう主張しましたが、大本営は聞く耳を持たぬまま大東亜戦争に突入。


開戦直後は、第25軍司令官としてマレー上陸作戦を指揮。

2ヶ月弱で1,100kmを進撃し、イギリスの東洋支配の拠点・シンガポール陥落に成功。

降伏を願い出ながら煮え切らない態度に終始したイギリス・パーシバル中将に、

「イエスか、ノーか!」

と無条件降伏を迫り、一気に交渉をまとめた・・・という逸話は有名。

※しかし実際はもたつく通訳に 「イエスかノーか(※降伏する意思があるかどうか)を聞けばよいのだ」 と声を荒げただけだったとか。 


上記のエピソードは、新聞が国威高揚を図るために捏造(?)されたもの。

大きな声といかつい体格から強面のイメージがありますが、決してイギリス側を恫喝したわけではなかったのです。

         


しかしこの大躍進で国民から英雄扱いされながら、天皇陛下が拝謁の機会を与えることはなく、彼はまたしても東條によって満州に飛ばされてしまいます。

そして1943年大将に昇進したものの、敗色濃厚になった翌年には第16方面軍司令官を任じられフィリピンの防衛戦を指揮。

しかし現場を知らぬ大本営からレイテ決戦を強いられ、思うように戦うことが出来ぬまま消耗。

日本が戦艦ミズーリ甲板上で降伏文書に署名した翌日の1945年9月3日、フィリピンのバギオで降伏・・・食糧難に苦しんでいた日本軍を象徴するかのように、巨漢だった山下大将はすっかりやせ細っていたといいます。

捕虜となりフィリピンで軍事裁判にかけられた彼は、実態の不明確なマニラ大虐殺などの罪まで着せられて死刑判決を受け、1946年2月23日に絞首刑に処せられました。

この時連合軍(アメリカ)は、山下大将(他殆どの将校
)に軍服の着用を許さず囚人服のままで処刑するという屈辱的な扱いをしています。


それだけ連合軍が彼に煮え湯を飲まされた証左といえましょうか・・・。

処刑に先立ち、山下大将が残した遺書では、敗戦の反省から

 ◇倫理的判断に基づいた義務の履行

 ◇科学教育の振興
 ◇女性に対する教育の充実と、母親としての自覚

を後世に託しています。

これらは、21世紀の日本にとっていずれも欠かせない事ばかり・・・山下大将の見識の高さが偲ばれます。

アメリカ人弁護士でさえその人格に魅せられたという山下大将について詳しく知りたい方には、この書籍がお勧め。

山下奉文正伝-「マレーの虎」と畏怖された男の生涯


                  (安岡正隆・著 光人社NF文庫・刊)

       


実はこの本、残念ながら著者が執筆中に亡くなったため完結していませんが、それでも一見豪放磊落な山下大将も実は情が厚く細やかな神経の持ち主であり、それ故に私生活では様々な苦労や葛藤があったことを十分伺わせます。

東南アジアの独立の道筋をつけながら60歳で散った〝マレーの虎〟のご冥福を、あらためてお祈り致します。笑3




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