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拳 聖

スポーツの世界には各種目に於いて〝連勝記録〟があります。

有名なところでは、大相撲における双葉山関の69連勝や、柔道・山下泰裕選手の(引き分けを挟んで)203連勝があります。

いずれも不世出の記録といわれていますが、もうひとつ・・・プロボクシングの世界にも47連勝というとんでもない記録が。

現代では世界ランカークラスの一流ボクサーだと年に数試合しか行いませんから、今後まず破られないであろうこの大記録を打ち立てたのが

 ピストン堀口 選手

今日は、昭和前期に活躍したこの名選手の命日・没後65周年にあたります。


         


ピストン堀口(本名:堀口恒男)選手は、1914(大正3)年に栃木県真岡市生まれ。

堀口家は彼が長男の5人兄弟でしたが、次男を除く4人がプロボクサーになったという、団子3兄弟ならぬ拳闘4兄弟。 

しかし彼自身は当初、警察官だった父親が勧めた柔道に打ち込んでおり、旧制真岡中学の主将として県大会で優勝を飾るなど、栃木県下で敵なしといわれた強豪選手でした。

そんな堀口選手がボクシングの世界に入るキッカケとなったのは、真岡中学の先輩で〝日本ボクシングの父〟といわれた渡辺勇次郎氏が真岡市に凱旋し模範試合を行った際、度胸試しとばかりに飛び入り参加してリングに上がり、プロ選手とほぼ互角に渡り合ったこと。

柔道とボクシングは全く違うスポーツなのに・・・やはり天性の素質があったのでしょうネ。

ボクシングに魅せられた堀口選手は渡辺先輩の誘いに乗って1932(昭和7)年に上京し、早稲田大学に通う傍ら日本拳闘倶楽部に入門。

その僅か半月後にアマチュア・ボクサーとしてリングに上がり1回1分12秒でKO勝ちして早くも才能の片鱗を見せました。

その後岡本不二というかつての名選手の指導を受け、上京1年後のプロ初戦も1ラウンド47秒でKO勝ちという鮮烈なデビューを飾ると、
5引き分けを挟んで47連勝を記録。

連勝中には日本タイトルはおろか、1936年にはB・D・グスマンを破り東洋フェザー級チャンピオンの座を獲得しています。

1941年5月には両国国技館で終生のライバルとなる〝槍の笹崎〟こと笹崎僙(たけし)選手と〝世紀の一戦〟といわれる死闘を演じ6回TKO勝ち。

以後〝拳聖〟といわれ、また対戦相手をロープに追い詰めると左右の連打を休みなく叩き込み、観客から 「わっしょ、わっしょ」 と掛け声が・・・いつしか〝ピストン〟という愛称がつくことに。

当時は蒸気機関車の時代だったからですが、今だったらどんな愛称になったんでしょうネ?

となれば、次は当然世界タイトルに挑戦・・・となるはずなのですが、残念ながら彼が世界タイトルマッチのリングに上がることはありませんでした。

その原因は、戦争。
全盛期と太平洋戦争が重なってしまい、試合どころではなかったのです。

彼より9年後に生まれた白井義男選手が1952年に日本人初の世界チャンピオンになったことを考えると、運命のいたずらとしか思えません。

1948年に日本ミドル級王座を獲得したものの、既に全盛期を過ぎていた堀口選手は、その2年後に現役を引退。


生涯戦績は176戦138勝(82KO)24敗14分。

(※82KOも日本記録であり、これもおそらく今後破られないでしょう。 また負け数が多いように見えますが、これは一旦1946年に引退宣言した後に事情があって短期間カムバックした後の敗戦が殆ど。)

驚くべきは、これだけ対戦がありながら、ダウンしたのがたったの3度(内2回はノーカウント)で、KO負けが無いこと。(レフェリーが止めたTKO負けでも2回のみ。)

打たれても打たれても前に出続けた堀口選手が、いかにタフだったか・・・想像を絶します。

その後ボクシング・ジムを開くなどしていた彼が突然36歳でこの世を去ったのは、引退から僅か5年後の1950年10月24日午前0時過ぎ。

東海道線の線路上を歩いていて列車にはねられるという、ショッキングな最期を遂げてしまったのです。

       
        『ラッシュの王者』 (山崎光夫・著 文藝春秋社・刊)

自殺説やバンチドランカー症状が出たのでは? という憶測もありましたが、上記書籍では普段から駅を乗り過ごすと線路を歩いて帰宅していたことを知る奥様や息子さんがそれを強く否定しており、真相は未だ不明。


しかし彼のボクサー魂は3代引き継がれ、現在でも孫にあたる元・日本ライト級2位の堀口昌彰さんが 『ピストン堀口道場』 の会長を務め、後進を育成しています。


道場の繁栄を願いつつ、〝拳闘こそ我が命〟と刻まれた墓碑の下に眠る 『拳聖』 のご冥福を、あらためてお祈り致します。笑3


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