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酸 欠

1999年10月、アメリカのトップ・プロゴルファーだったペイン・スチュアート選手(当時42歳)が全米オープン優勝の僅か4ヶ月後、プライベート・ジェット機で移動中に機内で急減圧が起こってパイロット以下6名全員が意識を失い、自動操縦で飛び続けた末に燃料切れで墜落・死亡するという事故がありました。

彼のファンだった私は当時大きなショックを受けましたが、それから6年後の2005年8月14日・・・つまりちょうど10年前の今日、同じトラブルが大型旅客機で起きてしまいました。

 ヘリオス航空522便墜落事故

ヘリオス航空とは、キプロス初の独立系民間会社として1998年に創業された格安航空会社。


キプロス・ラルナカからギリシャ・アテネ経由でチェコ・プラハに向け乗員6名・乗客115名を載せ飛び立った522便(ボーイング737)は、離陸してから約1時間後に高度10,400m上空で突然管制塔との交信が途絶えてしまいます。

     

               ヘリオス航空522便


原因は整備作業員のミスに起因する与圧・空調システムの異常による機内の酸素欠乏で、これによってパイロット以下乗員・乗客が意識不明に陥った、とされました。

自動操縦モードのままアテネ上空を旋回し続けたため、自爆テロの可能性も捨てきれなかったギリシャ空軍は戦闘機をスクランブル発進させ、同機を追尾。

旅客機に近づいて操縦席を目視すると機長の姿はなく、副操縦士が座席に座ったまま前かがみで動かず。

そして客室内は酸素マスクが垂れ下がったまま・・・と、ここでパイロットは信じられない光景を目にしたのです。

1人の男性が、客席からコクピット内に入り、機長席に座って操縦しようとしていたのです。驚き顔

彼の名は、アンドレアス・プロドロモさん。

機の客室乗務員でした・・・が、実は普通の乗務員ではありませんでした。

彼は元特殊部隊に所属していた軍人でダイバー・・・つまり一般人より遥かにタフガイだったのです。

しかもパイロット志望でイギリスの事業用操縦士資格を持っていましたから、携帯酸素ボンベを片手に何とか着陸させようと頑張っていたのです。

そして彼がそこまで頑張る理由が、もうひとつ・・・同機には、彼のフィアンセだったハリス・ハラランボさんがCAとして同乗していたから。


      
       Haris Haralambous  & Andreas Prodromou

他の乗客・乗員同様気を失っていた彼女を救うべく、彼はベストを尽くした・・・のですが、如何せんドア・ロック解除の暗証番号を知らず操縦席に入るのに手間取ったため、酸素と燃料は底をついてしまったのです。

市街地に墜落して二次災害を起こす危険があったため、あと5分で撃墜命令が出されるというところで同機は左右のエンジンが停止しアテネ郊外の山間部に墜落、121名全員の死亡が確認されました。

事故後の検証により、乗客の多くは墜落まで生存していたことが確認されたといいます。

気を失ったフィアンセを乗せ、たった一人で機を立て直そうとしたものの果たせず、意識があったまま墜落していったブロドロモさんの心中は如何ばかりだったか・・・想像するだに胸が痛みます。

彼とフィアンセが2人一緒にキプロスの丘に作られた墓に埋葬されたことが、せめてもの救いと言えましょうか。


※なお、ヘリオス航空はこの事故が響き、翌2006年事業停止に追い込まれました。



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