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礼 儀

先月3日、作家のC・W・ニコルさんが79歳で我が故郷・長野市で亡くなられました。

日本人女性と結婚し、日本に帰化。

自らを〝ウェールズ系日本人〟と称し、日本人よりも日本人であった彼に関する思い出話を同じ作家の五木寛之さんが月刊『致知』6月号のエッセーで披露されていましたので、以下に一部編集にてご紹介致します。

           ◆     ◆     ◆     ◆


ニコルさんはウェールズ出身の日本人である。

ドナルド・キーンさんと同じく異国に生まれ、日本を愛し、この国に帰化して日本で死んだ。

ニコルさんは冒険家であり、自然環境保護運動家であり、そして作家でもあった。

若い頃プロレスの前座を務めたことがある、というのはニコル伝説の一つだが、堂々たる体格と草花のような繊細な感覚の持ち主だった。

何十年か前、F・フォーサイスが来日した折に、帝国ホテルで私がインタビューをしたことがある。

その時、少年のように興奮して

「通訳はボクに任せてくれ」

と言ってきかなかったのがニコルさんだった。

当日フォーサイスと会った瞬間、ニコルさんはすごくあがってしまって滑らかに口が動かない。

これはまずかったかな、と思ったが後の祭りだった。

堂々たる体格のニコルさんが、しどろもどろになっている姿が面白かった。

       

そんなニコルさんが極地探検の体験を語ってくれた中で、興味深かったのが、

「どんなタイプの人が極限状態の中で強いか」

という話だった。

体力でもない。 勇気でもない。

寒気と嵐の中で何日も耐え抜くことのできる人間は、礼儀正しいタイプのメンバーだったというのだ。

テントの中に閉じ込められて何日も何日も待つ。
いつ嵐が過ぎ去るか知る術もない。
誰もが苛立ち、時には口論したりする。

そんな中で、最後まで耐え抜くことができる男は、意外なことに〝礼儀正しい男〟だったというのだ。

朝、起きるときちんとひげを剃る。
髪をなでつけ、歯を磨く。

顔を合わせると笑顔で 「おはよう」 と挨拶する。
横をすり抜ける時には、「エクスキューズ・ミー」 と言う。

そして時々、冗談を言って仲間を笑わせる。
出来るだけ身綺麗にして、荷物の整理も忘れない。

「そんなタイプの男が、いざという時に強かったんです。」


と、ニコルさんは言っていた。

「ガタイが大きくて荒っぽい男は、意外に頑張れなかったんだ。」

一度、山の中のニコルさんの家を訪ねて、食事をごちそうになったことがあった。

熊の肉を煮てもてなしてくれた。

私が食べ残したのを見て、ニコルさんは言った。

「ダメ。ちゃんと全部食べてください。熊さんに失礼じゃないですか。」

熊のような体格のニコルさんが、珍しく怒った顔をした事を憶えている。

「良き者は逝く」

という古い言葉を、私はしばしば思い出す。
長く生き残るのは、すれっからしばかりだ。

ニコルさんのはにかんだような笑顔を忘れることができない。


           ◆     ◆     ◆     ◆

礼儀正しき者は強い・・・可愛い我が子や孫をそういう人間に育てるためには、やはり小さな頃からの躾が大切でしょうネ。


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