FC2ブログ
強制引退

スポーツ選手に、いつかは必ず訪れる〝引退〟。


体力の限界を悟り涙ながらに会見を開くトップアスリートの姿を、私たちはこれまで幾度となく見てきました。


しかし中には、こんな理由で引退した・・・というか、させられた人物も。


今からちょうど70年前の今日、その不本意な引退を強いられたのは


 前田山 英五郎 


戦後初めて角界の頂点に立った、第39代横綱その人でした。


        


1914(大正3)年に現在の愛媛県八幡浜市で12兄弟の末っ子として生まれた前田山関は、子供の頃から手が付けられない暴れん坊だったとか。


14歳の時に高砂部屋一行が当地を巡業で訪れた際、力士から 「メシが腹いっぱい食えるぞ」 と誘われたことで入門を決意し上京。


翌年、喜木山(きすきやま)の四股名で初土俵を踏みます。


身長180cm・体重125㎏に成長した彼は、闘志あふれる取り口と豪快な突っ張りで人気を博しましたが、特に目上の横綱にも遠慮なく繰り出す張り手の威力は凄まじく、後にプロレス入りした力道山と巡業中にトラブルとなった際、その張り手一発で気絶させたという伝説が残っています。


そして稽古中に負ったケガが元で右腕切断寸前まで悪化したところを、慶大病院の前田博士の執刀により奇跡的に回復。


その恩義に報いるため、四股名を〝前田山〟に改名。

(下の名前・英五郎は群馬の侠客・大前田英五郎から取ったとか。 命の恩人と博徒の名をくっつけるあたりが、この人らしい・・・?)


ところが四股名を変えた後も大酒を飲んでは大暴れを繰り返し、部屋を破門になったことも。


しかし国士・頭山満氏に諭されたことで改心した後は、トントン拍子。1937年には関脇を飛び越えて大関に昇進。


その後9年半・18場所その地位を守りました。


そして1947年、大相撲史上初の優勝決定戦に出たことを評価され、戦後初の横綱昇進を果たしました。


ただし受け取った横綱免許には、普段の素行から 「粗暴の振る舞い之ありし時には自責仕る可く候」 という異例の但し書きがついていたとか。

まるでその後の〝悲劇〟を予見していたかのようです。


33歳という年齢だったこともあり横綱昇進後は休場が多く、1949年の大阪場所では初日力道山に勝った後は5連敗。


前田山関は腸カタルの診断書を協会に提出して休場。


治療のためと称して東京に戻ったのですが・・・その当日夜、後楽園球場で行われていたサンフランシスコ・シールズ対巨人の日米野球の観戦に出かけ、カメラマンの求めに応じグラウンドに降りてオドール監督と握手した写真が翌日の新聞に掲載されてしまいました。

    


もともと、同時入幕した鯱ノ里と〝前鯱チーム〟という野球チームを作る程の野球好きでしたが、それが災いした形。


当然のことながら、「休場中に不謹慎極まりない」 という大バッシングが巻き起こり、慌てた前田山関は急遽帰阪し出場を懇願しましたが、協会は聞き入れず・・・10月23日、半ば強制的に引退させられてしまいました。ダメだぁ顔


横綱在位たった6場所、しかもその間の戦績は24勝27敗25休・・・大相撲史上唯一横綱で負け越しという不名誉な記録を残して。


しかし悔い改めたのか、彼は引退後相撲界に貢献します。


高砂親方として後進を指導し、横綱・朝潮や大関・前の山を育て上げましたが、特筆すべきは角界初の外人力士・高見山を見出したこと。


そのきっかけは1951年に親方が力士たちを帯同して渡米し大相撲を紹介したことなのですが・・・実はこれ、先の〝シールズ事件〟で強制引退させられた親方に同情したGHQの計らいで実現したそうですから、何が幸運をもたらすか分かりません。


その実績をもとに、1962年大相撲初の海外巡業がハワイで行われ、その際にスカウトしたのがジェシー・クハウルア少年・・・未来の高見山関だったというわけ。

 ※高見山関に関する過去記事は、こちら。(↓)



その高見山が文化の壁を乗り越え、必死に稽古した末に1972年に幕内初優勝を果たすのですが、高砂親方はその前年57歳で他界。


残念ながら愛弟子の晴れ姿をその目で見ることは出来ませんでした。


親方が先鞭をつけた外人力士の数はその後増える一方ですが、その1人で彼の曾孫弟子にあたるモンゴル人横綱・朝青龍が診断書を添えて巡業の欠席届を提出しておきながら、地元モンゴルでサッカーに興じたことが発覚して出場停止を食らい、揚句に酒に酔って一般人に暴行を働いたことで半ば強制的に引退させられた騒動を、親方は草葉の陰からどんな思いで眺めていたのでしょう?


歴史は繰り返すというか、因果は回る糸車というか・・・ただ苦笑いしていただけかもしれませんネ。うー


                人気ブログランキング

スポンサーサイト



コメント
コメント
コメントの投稿
URL:
本文:
パスワード:
非公開コメント: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
トラックバック URL
トラックバック