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大衆路線

私のような昭和世代の方なら、何冊かお読みになったことがあるはず。

そのソフトカバータイプの新書レーベル


 カッパ・ブックス

が刊行されたのが、今から65年前の今日・1954(昭和29)年10月10日のことでした。


発行元は、講談社が軍部に協力した出版社としての摘発から逃れるべくトンネル会社(?)として1945年10月に急遽設立し、現在も 『女性自身』 などを出版している光文社。


そして創刊を発案したのは、当時同社の常務取締役出版局長を務めていた、神吉晴夫氏(1901-1977)でした。


        


神吉氏は、1938年に創刊された知識人向けといわれる 『岩波新書』に対し、アンチ教養主義を掲げ分かりやすさ・親しみやすさに重点を置く大衆向けの新書路線を提唱。

 ※岩波新書に関する過去記事は、こちら。(↓) 



そして1954(昭和29)年10月10日、『文学入門』(伊藤整・著)と 『小説 サラリーマン目白三平』(中村武志・著)が出版され、世にカッパ・ブックスが登場したのです。

   

〝カッパ〟は河童が由来。 

神吉氏が自宅の壁にかかっていた画家・清水崑先生の河童の絵を見て閃いたそうな。 創刊の言葉は


「カッパは、日本の庶民が生んだフィクションであり、みずからの象徴である。 

カッパは、いかなる権威にもヘコたれない。 
非道の圧迫にも屈しない。
なんのへのカッパと、自由自在に行動する。


その何ものにもとらわれぬ明朗さ。 その屈託のない闊達さ。

裸一貫のカッパは、いっさいの虚飾をとりさって、真実を求めてやまない。


たえず人びとの心に出没して、共に楽しみ、共に悲しみ、共に怒る。


しかも、つねに生活の夢をえがいて、飽くことを知らない。
カッパこそは、私たちの心の友である。」 (以下略)


と綴られており、ロゴマークはホルンを吹く河童でした。

現在では主流ですが、当時としては初めて9ポイントの大きな文字を使用し、また初めて
裏表紙に著者の写真・略歴を入れる装丁を採用。

創刊当時はあまり売れなかったものの、「カッパの本はみんなヒットする」 などのキャッチコピーを使って広告を打って大量生産を行い、生活実用書からノンフィクションなど分野も広げたことで販売部数は急伸。


創刊から5年後の1959年には総発行部数が1千万部を突破。

1961年に出版した 『英語に強くなる本』(岩田一男・著)は 「パンのように売れる」 というキャッチコピーが受けてか、3ヶ月で100万部を突破し、カッパ・ブックス初のミリオン・セラーに。


また1966年に第1作目を出版した 『頭の体操』 (多胡輝・著 シリーズ累計1,200万部以上) や、1966年に出版した 『五味マージャン教室』 (五味康祐・著)、また1970年に第1作目を出版した 『冠婚葬祭入門』 (塩月弥栄子・著 シリーズ累計616万部以上)もベストセラーとなり、1972年には累計販売部数が1億冊を突破。

光文社はこの勢いに乗じて、『カッパ・ノベルス』(1959年)、『カッパ・ビジネス』(1963年)、『カッパ・ホームス』(1969年)、『カッパ・サイエンス』(1980年)の各シリーズを創刊。

『カッパ・ノベルズ』では、当時無名だった松本清張さんを売り出し、共に清張・・・じゃなくて、成長を果たしました。
あせあせ

これらシリーズ合計で17冊ものミリオンセラーを出したのは、他に類を見ない快挙だそうな。

※因みに最後のミリオンセラーは、今月3日の拙ブログでご紹介した盛田昭夫氏の 『「NO」と言える日本』 (1989年) の123.8万部。

しかし、山あれば谷あり。

安保闘争が吹き荒れ労働運動が盛んだった1970年から、社長に就任していた
神吉氏の斬新な経営手法(現在で云うところの成果主義・抜擢人事)に労働組合が反旗を翻したことで、〝光文社闘争〟といわれる労働争議が勃発。

1977年に収束したものの、その間神吉社長は辞任・退職して 『かんき出版』 を創業。
他の役員やカッパ・ブックスの編集長も退職して 『祥伝社』 を設立。

その煽りで、一時カッパ・ブックスも出版を停止する状況に。


労働争議終息後復刊したものの、1990年以降は勢いが衰え、光文社新書と入れ替わる形で2005年に新刊発行を停止しました。

消滅する形となりましたが、新書ブームを巻き起こし、また労働争議で人材が流出したもののその出版手法が広まったことは、業界にとって有難い存在であったことは確かでしょう。

私自身何冊も購入しましたが、本棚を確認したところ残念ながら友人や部下にあげてしまい、1冊も残っていませんでした。

が、こんな本が・・・。


 『カッパ・ブックスの時代』 

               (新海均・著 河出書房新社・刊)


        


これを読むと、神吉氏の戦略やカッパ・ブックスの勢いが如何に凄かったかが分かります。

出版不況の今、もし神吉氏が生きていたら一体どんな手を打ったんでしょう?・・・そのアイデアを、是非聞いてみたいものです。
笑3

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