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弾 圧

江戸幕府成立から200年が経過した1800年代、西欧では産業革命によって工業生産力が飛躍時に伸び、新たな市場開拓のため日本近海には各国の船が出現するように。

その状況を憂えた幕府は、に1825(文政8)年に『異国船打払令』を出し、外国人との接触を強く禁じました。

その翌年には、天文方・書物奉行の高橋景保が外国資料と引き換えにご禁制の日本地図をシーボルトに贈り、彼が国外に持ち出そうとした『シーボルト事件』が起き、景保が獄死(記録上は斬罪)しています。

そして1837(天保8)年、日本船が難破し漂流していた日本人船員7名マカオで保護されるという出来事が。

その彼らをマカオ在住のアメリカ人商人チャールズ・W・キングがモリソン号に乗せて日本に送り届け、それと引き換えに通商を開かせようと画策。


       

                   モリソン号

同年6月末、モリソン号は浦賀に接近しましたが、前述の内払令に基づき幕府が沿岸から砲撃したため、入港を断念。

その後同号は薩摩に上陸して交渉したものの漂流民の引き取りを拒絶され、しかも空砲で威嚇砲撃されたため、非武装だった同号は反撃することなく日本人を乗せたままマカオに引き返しました。

※その後その日本人7名は二度と日本の土を踏めなかったとか。


この 『モリソン号事件』 が、その2年後・・・今からちょうど180年前の今日起きた


 蛮社の獄

に大きく関係しているのです。


それまで江戸幕府が採用していた学問は朱子学(儒学)でしたが、1830年代の江戸では蘭学が隆盛し、医療技術と共に新しい学問を渇望する流れが生まれていました。

※蛮社=蛮学(→江戸時代に研究された西洋学術の総称)社中の略)

その蘭学の代表的な存在が三河国(現・愛知県)田原藩の家老・渡辺崋山と、杉田玄白から蘭法医術を学んだ医師・高野長英でした。


   

         渡辺 崋山                 高野 長英  

1833~37年に起きた 『天保の大飢饉』 対策のために作られた 『尚歯会』 という組織に所属していた2人は、モリソン号事件が起きた翌年に同号に日本人が乗っていたことが明らかになると、崋山は 『慎機論(しんきろん)』 で、長英は 『戊戌(ぼじゅつ)夢物語』 で幕府の処置を批判。

すると朱子学を司る林家の出身で、かねてより蘭学を敵視し崋山の身辺を探索していた幕臣(旗本)・鳥井耀蔵(ようぞう)は、世間に出回った 『戊戌夢物語』 の著者を突き止めるよう老中・水野忠邦に命じられると、同著は高野長英の翻訳本を元にして崋山が執筆し、その崋山が(実際には小笠原諸島への渡航計画だったのに)アメリカ渡航を企てていると捏造した調査結果を報告。


※水野忠邦に関する過去記事は、こちら。(↓)



これを基にして、1839(天保10)年5月14日に名指しされた崋山ら渡航メンバーに出頭命令が下され、全員が伝馬町に入牢。

メンバーの一人だった小関三英は、5月17日に自刃し、身を隠した長英も18日に自首しました。

家宅捜索された際に 『慎機論』 の原稿が発見され、幕府批判が露見した崋山は2年後に切腹。


また長英は牢屋の火災に乗じて脱獄し、硝酸で顔を焼いて人相を変え逃亡生活を続けましたが、1850年に捕らえられ護送中に絶命(一説には自害)しました。

 ※この脱獄に関連する過去記事は、こちら。(↓)
 

  https://ameblo.jp/warmheart2003/entry-11489298655.html


一方の鳥井耀蔵はというと、その後水野忠邦の発案による『天保の改革』で厳しい取り締まりを行い、世間からは〝蝮の耀蔵〟〝妖怪〟などと忌み嫌われ、遠山の金さんでお馴染みの遠山金四郎を失脚させるなどしつつ、勘定奉行に出世。

しかし水野忠邦が諸大名から批判を浴びるようになると忠邦批判派に寝返りますが、その忠邦が復権すると形成逆転。

1844年に
職務怠慢・不正を理由に解任され、翌年には有罪とされて全財産没収の上る。翌年2月に鳥居は有罪とされ、蟄居。

以後明治維新後に特赦を受けるまで20年以上にわたって軟禁状態だったとか。

それでもしぶとく生き残るところは、まさに憎まれっ子世に憚るってところでしょうか?

そんな希代の悪役について詳しく知りたい方には、こちらのご一読をオススメします。


  『鳥居耀蔵 天保の改革の弾圧者 
                  (松岡英夫・著 中公新書・刊)


       


権力者の栄枯盛衰を物語る人生ですが、その没落も彼にハメられた蘭学者たちの怨念の為せる業だった・・・のかも?


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