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大番頭

福澤諭吉の娘婿にして〝電力王〟の異名を取った大実業家・福澤桃介が、かつて土佐出身で日本経済界を代表する実業家として2人の名を挙げたことがありました。

ひとりは三菱財閥の創始者・岩崎弥太郎。

そしてもう一人、その岩崎よりもその人間性やスケールの大きさを高く評価した人物がいるのですが、それが誰かお分かりになるでしょうか?

それは、かつて三菱・三井・住友をも凌ぐ一大財閥として名を馳せた『鈴木商店』の大番頭、


 金子 直吉


今日は、桃介をして〝我が国のナポレオン〟と言わしめ、丁稚奉公から立身出世を果たしたこの人物の命日・没後75周年にあたります。

       


直吉は1866(慶應2)年、土佐藩領内で商家の子として誕生。

一家は彼の幼少期に高知市に移り住みましたが、極貧のため彼は学校に行くことが出来ず、10歳の頃から丁稚奉公に出されました。

日々雑用をやらされながらも独学で経済学や中国の古典を学んだ彼は1886年、20歳の時に当時神戸八大貿易商のひとつに数えられていた 『鈴木商店』 に入社。

それ以降、亡くなった当主・鈴木岩次郎の未亡人・鈴木よねに目をかけられ、日曜日も休まず働き続けて鈴木商店を一大財閥に育て上げるも、大阪朝日新聞のデマ記事によって風評被害に遭い、1927年倒産に至る過程については以前拙ブログで取り上げましたので、そちらをお読みください。



さて、その後の彼はどんな人生を送ったのか?

経営破綻が決定的となった時でも泰然自若としていたという店主の鈴木よねをして、

「たとえ店はこんなになっても、金子が生きていりゃ千人力じゃ」

言わしめた直吉も、


「鈴木を潰したのはワシや、このままでは死に切れない

と残りの人生を鈴木商店再興に捧げました。

彼は鈴木の名を残した鈴木商店そのもので再出発を考えていましたが、大口債権者はそれに同意するどころか、直吉のカムバック自体にも反対。


仕方なく彼は鈴木商店の整理を進める一方、1919年に同社の子会社として発足していた太陽曹達(後の太陽産業→太陽鉱工、2005年に新日本金属化学と合併)を起点にして、国内外に数々の新規事業を計画。


         

                                     太陽産業執務室での直吉


古希(70歳)を過ぎても満州へ視察に出かけたり、北海道留萌に炭鉱開発(羽幌炭鉱)を進めるなど、事業意欲は衰えませんでした。

しかし1944(昭和19)年に入ってすぐに風邪をこじらせて体調を崩してから回復できず、同年2月27日に79歳でその生涯を終えました。


これだけの実業家でありながら、私生活は質素そのもの。

鈴木商店倒産の際、整理にあたった台湾銀行関係者は、そのあまりの質素な生活ぶりに驚き、深く畏敬の念を抱いた程だったとか。

また彼は酒・女・タバコもやらなかったばかりか、常に何人かの書生を養い学費を出していたため、家計は常に赤字。


しかし彼の教え子・弟子の中から、播磨造船所支配人で後に運輸・大蔵大臣を務めた北村徳太郎、また大蔵・商工・運輸大臣を務めた帝人・大屋晋三社長、日商の創業者の一人で後に貿易長官を務めた永井幸太郎など、多くの人材を輩出しています。


「鈴木商店はある宗旨の本山である。 

自分はそこの大和尚で、関係会社は末寺であると考えてやってきた。


鈴木の宗旨を広めるため(店に)金を積む必要はあるが、自分の懐を肥やすのは盗っ人だ。

死んだ後に金(私財)を残した和尚はくわせ者だ。」


と、坊主頭で見るからに修行僧然とした彼が語った通りの人生だったのです。


まさに経営者の鑑と言える直吉の生涯でしたが、その一方で米買い占めのデマ記事により鈴木商店が焼き討ちに遭った際、彼が一切の弁解・反論をしなかったことで疑惑をより深めてしまったことは、経営者だけでなく隣国の横暴から目を背け続ける今時の政治家も反面教師としなければならないでしょう。

そんな直吉の生き様に興味がある方には、このノンフィクション小説のご一読をオススメします。


 『鼠』 (城山三郎・著 文春文庫)

       

鈴木商店は米の買い占めをしたとして悪者扱いされ焼き討ちに遭ったのは、野党と大阪朝日新聞が結託する形で作り上げた印象操作・捏造報道による風評被害だったことが、筆者の克明な取材によって浮き彫りにされています。

昔も今も、彼ら左翼勢力のやり口は変わっていませんネ。うー

今宵久しぶりにこの本のページをめくりつつ、あの大実業家・渋沢栄一をして 「正規な学問はなくとも、天才的な事業家」 と唸らせた大番頭の冥福を祈りたいと思います。


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