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名 匠

17歳で修業に入ってから、杜氏の道一筋に70年。

現代の名工に認定され、4年前に一度引退したものの多くの愛飲家からの声に応えて一昨年から現役復帰した〝酒造りの神様〟、


 農口 尚彦 さん (86歳)

のインタビュー記事が、月刊『致知』2月号に掲載されていました。

現代の教育制度に警鐘を鳴らす非常に読み応えのある記事から、

抜粋・編集にてその一部をご紹介させていただきます。


           ◆     ◆     ◆     ◆

中学を卒業して最初の1年は家におったんですが、次の年の秋から修業に出ました。

他所へ行かなかったら一人前にならんという父の考えのもと、最初にお世話になったのは、静岡県の由緒ある酒屋でした。

そこには4年おったんですけど、最初の3年はとにかく雑用です。

麹係の見習いとして酒造りの基本を覚えながら、休憩所の掃除や暖房用の炭焚き、茶碗洗いや風呂の準備。

それから毎日17時から20時まで杜氏が晩酌するんですけど、その間正座してお酌をしたり、杜氏の下着から作業衣まで全部洗濯したり、一緒に寝泊まりする先輩の肩を揉んだり・・・。

その日の仕事が全て終わるのは夜11時頃で、次の日は朝3時から蒸した米を筵(むしろ)にさらす作業が始まります。

新入りは一番先に起きなきゃいけませんから、寝ている時間は殆どなかったですね。

夜通し働いたこともありますが、当時は何ともありませんでした。

       

私は辛いとか苦しいとか思ったことは全然なく、酷い事をやらされているという不満も一切なかったです。

朝起きるなり、もう夢中になって仕事ら没頭していました。

あの時に下積みの努力を積んだからこそ今があるし、ここまでやってこられたという気持ちしかないですわ。

そういう厳しい修業を通じて人間は鍛えられるのであって、甘やかされて育つと後々苦労をする。

やっばり若い間は、うんと修業すべきやと思うんです。

社会に出て月給のいいところで働こうなんて思ったら、まず間違い。

月給なんかいらないから、仕事を教えてくれというくらいの気迫がなきゃいけない。

仕事とはなんぞやと言ったら、社会のお役に立つことでしょう。

お役にも立たないでブツブツ文句を言いながら下積みを一生続けるのか、それともその中で希望を持って自分の全てを賭して出世していくのか。

自分の生きる道を求めて、そこに向かって努力する者こそトップになれると私は思います。

そして伸びる人と伸びない人の差はどこにあるかと言えば、それはやっぱり持っている夢の大きさでしょうね。

ここで満足と思うか、まだまだと思うか・・・。


           ◆     ◆     ◆     ◆

酒造りの名人といわれる農口さんですが、28歳の若さで杜氏に抜擢された最初の年に作った酒は、「こんな薄い酒は飲めない」 と散々の評価だったそうな。

頭をガーンと殴られたような衝撃を受けた農口さんの修業が本格的に始まったのは、この時からだったそうな。

以来農口さんは、実はご自身が全く飲めない下戸だった故にお客さんが飲んでいるテーブルを回って自分の酒を注ぎ、感想や意見を聞くことに徹したそうな。

また四国や九州など遠方の酒蔵にも、何か自分のやっていない事で目新しい事があれば・・・と周囲の反対を押し切って見学に行ったとか。

やはり道場さんとか名人と言われる方は、謙虚かつ素直な心の持ち主であり、常に探求心が旺盛のようです。



この農口さんの元には、是非杜氏になりたいという熱意を持った7人の若者が弟子入りしているとのこと。

その7人がどう育つのか・・・酒造りの名人が、人造りの名人として名を遺すことを期待して止みません。


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