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権 勢

今日は、江戸時代中期・・・九代将軍・家重、十代将軍・家治の時代に権勢を振るった老中、


 田沼 意次


の命日・没後230周年にあたります。


意次は1719(享保4)年、元紀州藩の足軽でありながら後に八代将軍となる藩主・吉宗に長く仕えた田沼意行の長男として、江戸で生まれました。


父親が将軍となった吉宗の小姓を務め、後に旗本に引き立てられたことが、意次にとって大きなアドバンテージに。

14歳の時に吉宗にお目見えした意次は、吉宗の長男・家重の小姓となり、家重が九代将軍となるや加増に加増を重ねて順調に出世、40歳頃には1万石の大名に。


仕えた将軍が変われば、辞職もしくはお役御免になるのが通常なのに、意次は家重死去後に十代将軍となった徳川家治にも重用されるという、異例の厚遇人事。

更に出世を重ね、53歳の時には老中兼任で5万7千石の大名・相良藩 (現在の静岡県牧ノ原市) 藩主に。

側用人(秘書役)と老中を兼任し、他の老中に娘を嫁がせて姻戚関係を結ぶことで、盤石の権力体制を整えました。 


       田沼意次


彼が実権を握る前から逼迫していた幕府の財政を再建すべく、意次は積極的な経済政策を推進。

朝鮮人参・白砂糖を国産化するなど国内産業の振興や、銀や鉄の生産に力を入れました。

そのための鉱山開発に関わったのがエレキテルの発明で知られる平賀源内であり、彼のスポンサーだったのが実は意次でした。

彼は蘭学を単なる学問としてではなくビシネスチャンスに生かそうとしたのです。


しかし栄枯盛衰は、世の習い。

栄華を誇る意次の転落のきっかけとなったのが、自身同様に異例の出世をさせ後継者として若年寄にした嫡男・意知が1784年に35歳で斬殺されたこと。

※斬りかかったのは、知行500石の旗本・佐野善左衛門(28)。

  その動機は私怨・公憤・乱心説があり、はっきりしません。


通常なら同情を買うところですが、田沼父子の権勢に不満を持つ人々は意次を憐れまなかったばかりでなく、切腹されられた佐野善左衛門の墓には供養の花が林立したとか。

印旛沼の干拓事業は洪水によって、またロシアとの交易を兼ねた蝦夷地開拓も目論見倒れに終わった意次は、
1786年に家治が逝去するや、そのわずか2日後に反対勢力(一橋派)によって老中を辞任させられ、降格。

その直後、それまで築いてきた水野家・松平家との縁戚関係を離縁によって次々と絶たれると、辞任の2ヶ月後には家治時代に加増された2万石や大阪蔵屋敷に保存していた財産を没収され江戸屋敷からも退去命令が。

更に蟄居を命じられた彼に追い打ちをかけるように相良城は打ち壊され、城内の財産も没収。

山高ければ谷深し・・・といいますが、まさに一時の栄華からは考えられないような没落ぶり。


意次は失意の中、1788(天明8)年6月24日に69歳でこの世を去ったのです。


かつて私は学校の授業で、

田沼意次=賄賂を受け取った悪徳政治家の見本】

の如く教えられた記憶があります。


ところが近年では、彼の政治手腕は再評価されているのだそうな。

悪徳政治家のイメージは松平定信ら反田沼派が後年広めたものであり、
賄賂は既に元禄時代からはびこっていました。


吉宗時代の質素倹約・農民に対する増税政策の失敗から幕府の財政は逼迫しており、市場主義経済政策を通して貨幣の流通を活性化し、商人に課税して幕府の財政再建を狙ったことは画期的・・・また地元・相良藩での治世も至極真っ当なものだったとの事。


       
         『田沼意次』 (藤田覚・著 ミネルヴァ書房・刊)


そんな意次の政治活動を見た時、私はあの田中角栄氏と姿が重なるのです。


一介の農民の出で学歴もないところから這い上がり、総理大臣就任も54歳と意次の老中就任とほぼ同年代。


『日本列島改造論』 を引っ提げて経済成長を目指したものの、金権政治を批判されて退陣・・・ロッキード事件の公判中に淋しい最期を迎えた等々。

また部下や周囲の人々に常時気配りを怠らなかった点も同じ。


意次も単なる悪徳政治家ではなかったことは、想像に難くないところ。


政治家の評価をたったの一言二言で済ますのは、あまりに短絡的かつ失礼と言うべきでしょうか。


田沼時代が去った直後、人々は


〝田や沼や 汚れた御世を改めて 清くぞ住める 白河の水〟


と詠みましたが、やがて松平定信の改革による締め付けが厳しくなると一転、


〝白河の 清きに魚も 住みかねて 元の濁りの 田沼恋しき〟


に変わったとか。


・・・一番勝手気ままなのは、実は庶民なのかも知れません。うー


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