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分 裂

ここ2,3年、若い世代にも注目されているという、落語。

『笑点』 は相変わらず高視聴率を誇り、テレビには人気落語家が何人も出演していますから、その人気の底堅さが伺えます。

が、今からちょうど40年前・・・その落語界を揺るがす〝事変〟が勃発しました。 それは、


 落語協会分裂騒動


それまで、真打昇進は師匠・会長・席亭全員の承認を得て決まる・・・という建前はあったものの、実質的には会長の専断で決められていました。


1965~72年まで(江戸落語の団体である)落語協会の会長を務めた三遊亭圓生師匠は、真打昇進について


「真打になるだけの能力がある者がなるべきであって、2つ目で終わる者は終わっても構わない」

という厳しい考え方の持ち主でした。

それ故、圓生師匠の弟子ですら真打になれず、若手落語家の間では不満がくすぶっていました。

そして柳家小さん師匠が圓生師匠の跡を継いで5代目会長に就任すると、三遊亭圓楽・立川談志らを新理事に登用し、理事会に合議制を導入。

10年以上2つ目で留まっていた若手の声に応える形で、協会最高顧問だった圓生師匠は反対したものの、理事会の多数決により同年3月と10月にそれぞれ10人ずつ、20人もの真打を誕生させたのです。

そしてしばらく沈静化した後、1978年5月8日に再び10名の真打昇進が理事会の多数決により決定したことに、圓生師匠が反発。

同年5月24日に、圓生師匠は意を同じくする直弟子の圓楽・志ん朝・圓蔵らと共に赤坂プリンスホテルで記者会見を開き、真打乱造による落語の低質化を問題視し、新たに 『落語三遊協会』 の立ち上げを発表したのです。


   

         三遊亭圓生                  柳家小さん

当初は圓生師匠の憂いに共感するファンも多く、小さん師匠ら落語協会幹部に批判が集まりました。

しかしそれまで組織の頂点に君臨し独断専行だった圓生師匠の根回し下手が影響してか、当初移籍を期待していた金原亭馬生・林家三平・立川談志の各一門らが合流せず、また直弟子だった三遊亭さん生・好生も同調しないなど、結局三遊協会に加盟したのは圓生・志ん朝・圓蔵一門だけ。

その様子を見ていた落語芸術協会も反発し、また寄席を仕切る席亭も「三遊協会の出演は認めない」 ことを翌25日に決定。

プロ野球に例えるなら、新リーグを立ち上げたものの東京ドームや甲子園で試合をさせてもらえないってこと。

落語三遊協会の命運は、旗揚げ後僅か1日でほぼ決してしまいました。

席亭の決定を受け、圓蔵・志ん朝一門はすぐさま小さん会長に頭を下げて落語協会に復帰。

言い出しっぺの圓生師匠は意地で新団体を存続させようとしたものの、席亭から締め出されたために地方公演や公民館などでの小規模な寄席しか活躍の場がなくなってしまいました。

新協会存続のため働き詰めとなった圓生師匠は、旗揚げから1年4ヶ月後の1979年9月3日、習志野文化ホールで開かれた落語三遊協会後援会発足式の席上で一席演じた直後、楽屋で心筋梗塞を起こし昏倒・・・そのまま帰らぬ人に。

奇しくもその日は、圓生師匠79歳の誕生日でありました。

誕生日に弟子たちが贈ったイタリア製の靴を玄関で履いたら、

「こりゃ、重いねェ。 うん、重すぎるょ。 悪いけど換えてきておくれ。」

と言った数時間後に息を引き取ったそうな・・・もう身体は疲れ切っていたんでしょうネ。

大黒柱を失った三遊協会は、事実上崩壊。


傘下の落語家たちは協会を解散し、1980年2月に落語協会に復帰し、一連の騒動は収まりました。

しかし多くの落語家の運命はこの騒動に巻き込まれる形で変わりましたし、5代目・圓楽師匠は復帰を拒み独自路線を歩むことに。

※その圓楽師匠に関する過去記事は、こちら。 (↓)



結局、この分裂騒動ではお互いに得るものはなく、ギクシャクした人間関係だけが残った形。

この騒動に関して詳しく知りたい方には、その渦中にいた圓生師匠の弟子・三遊亭円丈師匠が綴ったノンフィクション小説

 『御乱心 落語協会分裂と、円生とその弟子たち  (主婦の友社・刊)


       


のご一読をお勧めします。

登場人物は全て実名であり、著者本人が 「95%
は事実、残り4%は細かい言い回しの違い、1%はギャグ」 と述べている本書は、落語ファンでなくとも読み応え十分。

(ただし、この円丈師匠がかなり圓楽師匠を嫌っていたことを割り引いて読んだ方がいいかもしれませんが・・・。)

この本を読むと、何やら以前政界で起きた〝加藤の乱〟を彷彿とさせます。

大騒ぎした割には尻すぼみってところが、ソックリ!?あせあせ


 


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