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英 断

今から23年前の今日、朝8時15分過ぎ。


当時サラリーマンだった私は、出勤のため地下鉄有楽町線に乗っていました。


・・・と、走行中に電車が突然止まり、しばらくして 「先程、築地駅で走行(運行?)障害が発生しました。」 というような車内放送が流れたのです。


普段 「車両点検により・・・」 とか 「人身事故により・・・」 等々の案内は時々耳にしますが、そんなアナウンスは初耳。


(一体、何があったんだ?)


という、何とも言えぬ胸騒ぎというか、イヤ~な予感がしたことを憶えています。


出社してすぐにクルマで営業に出かけた私は、やたらに走り回るパトカーのサイレンを耳にする異様な雰囲気の中ラジオから流れてくる臨時ニュースを聞き、初めて車内アナウンスが何を意味していたのかを知ることに・・・。


それが1995(平成7)年3月20日、オウム真理教によって引き起こされた


 地下鉄サリン事件


でした。


12名の死者、そして約6,000名もの重軽傷者を出したこの事件そのものについては、あらためてここで説明する必要はないと思います。


      


しかしこの事件が起きた日、3名の医師による 〝英断〟が多くの人命を救ったことについて、当時は殆ど報道されませんでした。


最も多くの被害者を出した地下鉄日比谷線・築地駅。


あまりの被害者の多さに、病院に連絡を取る余裕もないまま救急隊員によって続々と搬送される被害者を見て、 


◆ 外来患者を断り、事件の被害者治療を最優先。
◆ 全ての搬送を受け入れる。


これを即時決断したのが、当時の聖路加国際病院々長・・・昨年7月に105歳で大往生を遂げられた日野原重明


ベット数が足りず、礼拝堂を開放して軽症患者を運ぶよう指示したのも日野原院長だったそうです。


        ウォームハート 葬儀屋ナベちゃんの徒然草-日野原重明先生

                 故・日野原重明先生


一方事態が掌握できなかったため当初は農薬中毒という見方が大勢だったものの、瞳孔収縮等それでは説明できない症状がみられ、治療方法を確定できなかった医師団のもとに一本の電話が入ります。


電話の主は、信州大学付属病院の柳沢信夫医師。(現・信州大学及び東京工科大学名誉教授)


9ヶ月前に起きた 『松本サリン事件』 で被害者治療の指揮を執った方でした。


たまたま観ていたテレビで事件を知り、その被害者の特徴的な症状から 「サリン中毒に違いない」 と確信。 


すぐに自ら聖路加病院に直接電話をかけ、特効薬・治療法などをFAXで伝えたのでした。


その電話を受け、最終的に特効薬 ・プラリドキシムヨウ化メチルPAM ) の投与を決断したのは、同病院救命救急センターの石松伸一医師(現・聖路加病院救急部長)。


サリン中毒でなかった場合、この薬の持つ強い副作用で被害者が死亡することも有り得る・・・という状況下での、ギリギリの決断だったそうです。


◆もし聖路加国際病院が全被害者の受け入れを拒否していたら?

◆もし柳沢医師が直接病院に電話せず厚生省等に連絡していたら?

◆もし石松医師によるPAM投与の早期決断がなかったら?


後日アメリカ国防総省から、「死者が70~80名出てもおかしくない無差別テロにもかかわらず、どうして被害を最小限に食い止めることができたのか?」 と日本政府に照会があったとか。


その答えは3人の医師による英断と、救出にあたった警察・消防の方々、また特効薬 “パム” の配送に携わった製造元・スズケンや住友製薬の社員さん、そして非番にも関わらずテレビを見てすぐさま病院に急行し治療に加わった看護士の方々など、多くの人々による献身的な救命活動の集積だった、といえるでしょう。


政治家の優柔不断・実行力不足が目立つ昨今。


国会等で上っ面の空虚な言葉を並べ立て個人攻撃など枝葉末節に拘っている彼らには、非常時に勇気ある決断を下した3人の医師たちの行動を見習うべきでしょう。


そして20年以上経過したということは、この事件を全く知らない若者が成人になる・・・いや、実質的には現在30歳未満の若者には殆ど実感がないはず。

数日前、この事件に関わった実行犯の死刑囚数名がそれぞれ地方の拘置所に移送されたことが報道されましたが、それが何の事件かを知らない若者には、私たちが語り伝えなければなりますまい。


日本国内で起きた未曾有のテロ事件を、絶対に風化させてはいけませんから。 


最後になりましたが、この事件で不運にも尊い命を奪われた犠牲者の皆様のご冥福と、今なお後遺症に苦しんでいらっしゃる多くの被害者の一刻も早いご回復を、心よりご祈念申し上げます。


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