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不死身

先日、久しぶりに書店サーフィンをしてレジで並んでいる時、平積みの本の中に気になるタイトルの新書を見つけました。 それは


『不死身の特攻兵』 (講談社現代新書・刊)

     


(十死零生といわれた特攻で〝不死身〟って、どういうこと?)


と不思議に思って手に取ってみると、表紙には「9回出撃して生還した特攻兵がいた」と書いてあります。


私自身そんなに多く出撃して生き延びた特攻隊員がいたなんて知りま


せんでしたから、その方のインタビューが掲載されている同書に興味


が湧き、そのまま買い求めました。


〝不死身〟だったのは、佐々木友次(ともじ)伍長。


有名な 『神風特別攻撃隊』 は海軍ですが、彼が所属したのは陸軍の特攻第一陣である 『万朶(ばんだ)隊』 。


9回(※離陸したのは8回)出撃し、時には爆弾を投下して敵艦に命中させたことがあったものの、体当たりせず帰還し続けた方でした。


そこには様々な要因があったものの、ご本人の


「死ぬよりも、死ぬまで何度も出撃して敵に爆弾を命中させることこそが(軍人として)大事」


だというポリシーを守ったことが大きかった由。

ベストセラーとなり映画もヒットした 『永遠の0』 の主人公・宮部久蔵に何となく似ている気がしますが、宮部隊員は最後に体当たりを敢行。

同作の結末とは違い、2度も葬式を出し軍神として祭り上げた郷里・北海道に終戦後帰還した佐々木伍長を、周囲の人はどんな思いで迎えたのか?

またご本人は戦後をどう生き抜いたのか?

「やっぱり、そうか。」 と納得したり、あるいは 「えっ、そうだったの?」 と驚かされる箇所もありましたが、実際に何度も出撃しては戻ってきた伍長の証言は、他に類を見ないもの。

同書の中に、特攻の発案者といわれる大西瀧次郎中将が、

「特攻を行う理由は、2つ。


まず、天皇陛下が特攻を知れば、必ず戦争を止めろと仰せられるであろうこと。


もう一つは、それによって天皇陛下が戦争を止めさせられたという歴史が残る限り、必ず日本民族は再考するであろう、ということ」


と語ったと記されていますが、それを裏付ける証拠はありませんし仮に大西中将がそう思っていたとしても、残念ながら部下にはそれが伝わらず、次々と特攻隊を編成し続け、また実際に散華された特攻隊員もそれを知る由もなく、ただ日本の勝利を願いつつ散華されたのが現実。


著者の鴻上尚史さん、彼に企画を持ち込んだテレ朝、そして出版元の講談社共々左翼系であるためか、行間には特攻や日本軍に対して批判的な記述が読み取れますが、それを差し引いたとしても重要な証言であることに変わりはありません。


それにしても、命令絶対の軍において佐々木伍長はよくぞ上官の命令に背いて己の信念を貫き通したもの。


小心者の私には、逆立ちしてもできませぬ。

もちろん、体当たりも・・・。うー


インタビューの2ヶ月後、2016年2月に92歳で天寿を全うした伍長のご冥福を祈るばかりです。


なお、同書はあくまで佐々木伍長の証言を基にして書かれたものですので、特攻の全容を網羅したものではありません。


更に(陸軍の)特攻に関して詳しく知りたい方には、1975年に菊池寛


賞を受賞した、こちらのご一読をオススメします。


但し現在は絶版になっているので、中古本市場で入手するしかないですが・・・。

 『陸軍特別攻撃隊』 1・2・3

                  (高木俊明・著 文春文庫・刊) 


  

※『不死身の特攻兵』の第2章は、この作品から佐々木伍長に関わる部分を中心に抜き出したダイジェスト版です。


【余 談】


この両書に(佐々木隊員の上官だった)〝冨永司令官〟として登場するのが、冨永恭次中将。

       


特攻隊出撃命令を出す際には


「君らだけを行かせはしない。最後の一戦で本官も特攻する」


と言って若い兵士の命を次々と散らせながら、自分は部下を置き去りにしてフィリビンから台湾へ逃亡したという、陸軍史上最低・最悪といって差し支えない軍人。

こういう男にだけはなりたくない・・・読んでいてここまで腹の立つ人物も珍しいです。

しかし彼の長男・冨永靖陸軍大尉は、慶應義塾大学卒業後特別操縦見習士官となり、1945年5月25日に都城飛行場より 『疾風』 爆装機に搭乗し、特攻により散華されました。

上官が感服するほどの堂々たる出撃ぶりは、父親の恥辱を晴らさんとしたからなのでしょうか?

父親の冨永中将はそれを知ってか知らずか、1960年まで生き長らえましたが。
うー


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