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【葬儀屋時代の思ひ出】 司 会 <中>

開式5分前になっても姿を見せないSさん・・・ヤキモキする私を尻目に、ご親族の皆さんは涼しい顔。


不思議に思ってお聞きすると、ナントSさんのお住まいは式場から自転車で5分もかからない距離にあるとの事。


(道理で、さっきあんな格好で式場に来られたんだ・・・)


と妙に納得したちょうどその時、定刻の午後6時ジャストにSさんが姿を現しました。


「おっ、皆揃ってるようだネ・・・。んじゃ、始めようか?」


と言って、スタスタと式場に入ろうとするものですから、私は慌てて

「す、すみません。 ちょっとだけ打ち合わせさせてください。」


と言ってロビーの片隅に来ていただき、

「司会はお任せしますが、私から開式の口上だけは述べさせてください。 その後はよろしくお願いしますネ。」


と申し上げました。 するとSさんは


「おう! 分かった、分かった。」


と返事をしつつ、式場内へ。


(ホ、ホントに分かってるのかなぁ・・・)うー


そして予定より10分遅れて、兎にも角にも通夜式は始まったのです。


        


式場中央に綺麗な花々で囲われた棺をご安置し、その周囲を囲むようにご親族全員が着席されました。


私は開式の口上を述べた後、


「ではこれより、S様のお取り仕切りによりまして、通夜式を開式とさせていただきます。 それではS様、よろしくお願い致します。」


するとSさんは、席を立つとその場でマイクを手に持ち、何やら準備してきた原稿をポケットから取り出し、それを読み始めました。


内容は・・・故人様と本家(というかご自分!?)の略歴、そして今回無宗教葬形式になった経緯の説明でした。


(あらら、Sさん・・・それって喪主様が喋る内容ですョ。)うー


なんて思っている内に〝司会者〟Sさんのスピーチ(というか原稿朗読)が終わりました。


するとSさん、こうおっしゃったんです。


「で、このたびの葬儀につきましては、葬儀社ウォームハートの社長さんに大変お世話になりました。 ありがとうございました。」


(Sさ~ん、そんなことは言わなくても・・・。

それにまだ開式したばかりで過去形はマズいでしょ。)


そして、これまた予想外の一言がSさんの口から!


「それでは社長さん、あとはよろしく!」


そう言うなり、ドッカリ椅子に座ってしまうではありませんか。驚き顔


(えっ? ち、ちょっとSさん、貴方さっきまで司会進行やるって言ってたじゃないですかぁ。)


喪主席に座っているA子さんが、もう涙目で私をすがるように見つめています。


嗚呼、一難去ってまた一難・・・どうする、ナベちゃん!?


                ・・・・To be continued!


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