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記者魂

一昔前に〝翔んでる女(性)〟という言葉が流行りましたが、この方はその元祖と言って差し支えないかもしれません。 その人の名は、


 ネリー・ブライ 

    Nellie Bly


彼女(本名:エリザベス・ジェーン・コクラン)19世紀末から20世紀初頭にかけてアメリカで活躍した女性ジャーナリスト・・・というか、今でいうスキャンダル(暴露)記事の先鞭をつけた記者でした。


1864年に現在のアメリカ・ペンシルベニア州ピッツバーグ近郊の農家に生まれた彼女は、寄宿制の学校を学費が払えなかったため、やむなく中退。

しかし生まれつき文才があったようで、無職だった時に地元のピッツバーク・ディスパッチ紙のコラムに性差別主義に対する反対意見を投稿。

そのハイレベルな文章力に目をつけた同紙の編集長ジョージ・マドンが彼女をリポーターとして採用することに。


たまたま給仕が口ずさんでいた〝アメリカ音楽の父〟フォスター作の名曲 『ネリー・ブライ』 をそのまま彼女のペン・ネームにしたのです。


       


美貌の中にも非常に意志の強そうな眼をした彼女は刑務所や工場に自ら足を運び、今でいうところの〝潜入ルポ〟を執筆して注目を集めます。

しかしスポンサーの圧力などで書きたい記事が書けなくなると、彼女は単身ニューヨークへ。

そして自らを売り込んでジョゼフ・ピューリッツァーの主宰するニューヨーク・ワールド紙に移籍。


入社の条件としてビューリッツァーと交わした約束通り、彼女は患者になりすまして精神病院へ入院すめという、前代未聞の潜入取材を敢行します。


そこでの実体験を綴った連載記事 『精神病院鉄格子のかなたに』 は、ニューヨークで知らない者はいない程の大反響を巻き起こしたとか。

そんな彼女の名を一躍世界的に有名たらしめたのは、今からちょうど130年前の今日・1889年11月14日に彼女が挑戦をスタートさせた一大企画でした。


それは、1872年にフランス人作家ジューイ・ベルヌが発表し世界的ベストセラーになった小説 『八十日間世界一周』 を、実際にやってみようというもの。

まるで 『進め!電波少年』 のヒッチハイク旅行の如き破天荒な企画ですが、飛行機も電車もない時代に蒸気機関車と蒸気船、それに馬車を使って女性が単独で世界一周し、その旅行記を記事にするというのですから、電波少年以上に危険かつ無謀なチャレンジだったと言っていいでしょう。

この旅行を出発の僅か3日前に打診されたという当時25歳だった彼女は、躊躇なく快諾。

11月14日午前9時40分3秒、ニューヨーク近郊のニュージャージー州ホーボーケンの埠頭からオーガスタ・ヴィクトリア号に乗ってイギリスに向け出発した彼女は、途中原作者ヴェルヌにフランスの自宅で会うなどしながら見事翌1990年1月25日、72日6時間11分14秒で世界一周を成し遂げたのです。

その間、連日電報で送られてくる彼女の紀行記事は新聞に掲載され、大人気を博したとか。

ところで、これには裏話が。

ブライの世界一周旅行を知った雑誌社コスモポリタンが、これに対抗すべく急遽同社の女性記者エリザベス・ビスランド(当時28歳)に同じ世界一周旅行をさせたのです。

しかも彼女がその社命を受けたのは、なんと出発日・14日の朝!

ろくな準備もしないままブライは東回り、ビスランドは西回りで世界一周に旅立ち、インド洋上ですれ違った2人は、いずれも日本にも立ち寄っています。

 

しかしビスランドはブライよりもわずかに遅く76日を要して負けた(?)ためか、あまり名前が出てきません。

(とは言え、彼女から富士山や横浜の商店街の美しい情景を聞き及んだ知人の小泉八雲がいたく感激し来日するキッカケになったそうですから、我が国にとっては彼女の方が大きな存在だったのかも。)


でもこの2人には、共通点がありました。


南北戦争で敗れた南軍側の出身で、家は貧しかったこと。


そして男性社会の中で筆一本で生きていくためにどんなチャンスにも飛びつき、度胸と自らの才能でのし上がろうとしたこと。

強烈なハングリー精神がなければ、こんな無謀な企画には乗らないですょネ。


とは言え、女性の強さをまざまざと感じさせます。


その後1895年に富豪と結婚し一時ジャーナリズムの世界から引退したブライでしたが、1904年に夫が他界。

彼の会社を引き継ごうとしましたが、さすがに素人経営ではうまく行かず破産の憂き目に遭い、再び彼女はジャーナリズムの世界に復帰。

女性投票権に関する記事や第一次世界大戦のヨーロッパ戦線を取材するなど精力的に活動しました。


1922年に57歳で天に召された彼女の波乱万丈の人生は、こちらの

 

 『ネイリー・ブライ物語 世界最初の婦人記者 

                                (三省堂・刊)


       


で詳しく知ることができます。


個人的には、ロクに取材もしないのに見てきたかのようなフェイク記事を書いたり、他メディアの情報だけを頼りにしつこく質問をぶつける東京新聞の某女性記者にこそ、この本を読ませたいと思うのですが。


・・・さて、皆さんは会社から 「今日から世界一周して来い!」 といきなり命じられたら、やりますか? やりませんか?あせあせ


 


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